恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「いいから食ってみろ。くぬ、さんさなー」


「あっ! またおてんばって言った。そのさんさなーってやめてくれない? 陽妃っていうちゃんとした名前があるの」


「そんなら、おまえもやめれー」



むすっとして、おばあちゃんは続けた。


「そぬおばあちゃんてやめろお」


「何で?」


「“ちゃん”やあ、わらしみたいで嫌いさ」


「……じゃあ、何て呼べばいいの」


「おばあでいいさ」


おばあ、ね。


「分かった。じゃあ、おばあ! これでいい?」


あたしが強気な態度を取っても、痛くも痒くもないらしい。


おばあは相変わらずの仏頂面でフンと鼻を鳴らした。


……可愛くない。


むっとして睨み合うあたしたちを、海斗がクスクス笑った。


「ふたりとも、そんくらいにしなっさあ。さめるよー。食べよー」


あたしは止めていた息をふうっと吐き出した。


「おばあ、一時休戦しよう」


おばあも体の力を抜いたようだった。


「いー」


あたしとおばあ。


後々、このおばあに救われることになるなんて、この時のあたしは何も分かっていなかった。


やわらかくて塩っけのあるアバサー汁は、まろやかで、すっと胃に落ちていく。


「おいしい! これ、おばあが作ったの? すごいね、おばあ」


無愛想なおばあが、こんなに優しい料理を作るなんて。


「フン。陽妃に誉められても、嬉しくないさー」


う……やっぱり可愛くない。


なんでこんなに無愛想なんだろう。


あたし、もの凄く嫌われてるかも。


むすっとしてアバサー汁を飲むおばあを見つめて肩を落とした時、海斗が耳打ちをしてきた。

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