恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「どういうこと?」


聞いたあたしを無視して、おばあは背中を向けた。


「いずれ知る日が来るさ」


「おばあ?」


いずれ知る日が来る?


「それは、おばあの予言なの?」


ユタの予言?


おばあが振り向いた。


「違うー。おまえらはくぬ短い間に仲良くなりすぎてしまったが。毎日、一緒にいるだろうが」


そう言われてみると、確かにそうだ。


この島への土を踏んだあの日から、気づくといつも海斗が隣にいる。


晴れた日は、必ず、一緒に浜へ行く。


家が隣だから、何かと接触が多い。


「毎日一緒に居るなら、当たり前さあ。いずれ、知る日が来るに決まっているさ」


「あの、おばあ……海斗は」


海斗が抱えているものは、どんな傷跡なんだろう。


それを聞こうとした時、おばあはとっさに背を向けた。


「わあに聞くな」


「えっ?」


「わあに聞いても、何も答えてやれないさ」


少しだけ、おばあが怖くなった。


ほんのちょっぴりだけど。


おばあのふてぶてしい口振りは、まるで、あたしが今言おうとした事を予測していたかのようだったから。


心を読まれているのかも。


なんて、少しだけ怖くなった。


「いつかは、かんなじ知るだろうよ。でも、それは今じゃなくていいのさ」


そう言って、おばあはのしのしと歩いて行く。


「陽妃よ。海斗は、おまえの過去を受け入れたよー」


のし、のし、歩きながら、


「陽妃も、海斗ぬ何を知っても、受け入れてやれえ。海斗が望むなら、受け入れてやるといいよ」


とおばあは言った。
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