泣き顔にサヨナラのキス
 

 
それから、原口係長が起きるのを待って、タクシーに乗り、自分の部屋に戻った。


朝7時、誰も居ない独り暮らしの部屋。


鍵を開けて、玄関に入った瞬間、その場に立ち尽くす。


どうして――…


見覚えのある男物の靴。



「……カナ?」


孝太の声だ。


咄嗟に出て行こうと、ドアノブに手を掛けた。


「カナ、何してんの?」


背後から迫る孝太の声に、追い詰められた気分になった。




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