泣き顔にサヨナラのキス
    


「野上!」


「え?」


「おつり、忘れてる。ホラ」


小銭を受け取るために差し出した掌に、原口係長の指先が触れた。


その瞬間、あの夜に抱きしめられた温もりを思い出してしまった。




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