泣き顔にサヨナラのキス
「……知ってたよ。いや、正確に言うと、原口係長から訊いていた」
嘘でしょ?!
知っていて、ずっと知らないフリをしてくれていたの?
「い、いつ訊いたの?」
「カナが異動して、少し経った頃。ショックだったよ。カナのこと、諦めようかとも想ったけど。
だけど、やっぱり誰にも渡したくない。好きなんだ」
「……」
孝太の瞳は真っ直ぐにあたしを捉えていて、少しの迷いも無いように想えた。
ごめんね。
どうしてあたし、ちゃんと向き合ってこなかったんだろう。
こんなに想ってくれているのに。