泣き顔にサヨナラのキス


どうしてなのかな? それがあるからって、何も変わらないけど。


ずっと、欲しかったから。ただ、それだけなんだと想う。


「いいよ。あげる」

手渡されたのは、孝太の部屋の鍵。


「あ、ありがとう」

「これで、少しは安心出来る?」

「うん」

「でもさ、それいつ使うの?」

「……わかんないけど」

「他に欲しいものはない?」


……あるよ。


あたしが欲しいものは。


「はい、お待たせ。遅くなってごめんね」

絶妙のタイミングで、生ビールとさっき頼んだ枝豆を持って弓枝ちゃんがやってきた。





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