泣き顔にサヨナラのキス
 

しばらくの沈黙の後

「……ご苦労様」

低くて嗄(しわが)れた鈴木専務の声が聞こえて、あたしはホッと息を吐く。


やり遂げたと実感も湧かないうちに、原口係長が「ありがとうございました。では、これにて失礼します」と頭を下げた。


「へっ?」


思わず間抜けな声が出てしまったあたしを原口係長が、誰にも気付かれないように小突いた。


「次と交代だ」


「えっ?」


だって、ダメ出しは?


突っ込みは?


ボツじゃないの?




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