泣き顔にサヨナラのキス
少しの間があって、「じゃ、行ってきます」と原口係長はあたしに背を向けた。
「あ、行って……らっしゃい」
上手く言葉に出来ずに、口ごもってしまった。
だからか、原口係長はドアノブに手を掛けたまま足を止めると、何か言いたそうに、ゆっくりと振り向いた。
視線が重なったのは、今日初めてかもしれない。
「……身体は、大丈夫か?」
「えっ?」
「その、山本さん、初めてだったからさ」
優しく落とされた原口係長の言葉に、心臓がドクンと跳ねて苦しくなる。
ダメです。優しい言葉なんて掛けないで。