泣き顔にサヨナラのキス
と、いきなり給湯室のドアが開いて。
それと同時に、ドアを開けた人物に目が釘付けになった。
「あ、原口係長!」
昨夜の事を考えていただけに、驚いて手に持っていたマグカップを落しそうになる。
「今から外出するけど、何かある?印鑑が必要な書類とか」
原口係長の声に、特別な感情は感じられなくて。
その表情を確認したくても、気まずさから、目を合わせることも出来ない。
「山本さん?」
「……えっと、特にはありません」
平静を装って事務的に答えてみても、どこか心の中の動揺が滲み出ているようで、居たたまれない気持ちになって俯いた。