泣き顔にサヨナラのキス
「あれ?お会計は……」
「お前が寝てる間に済ませた」
「ええっ?寝てました?」
「ああ、30分ぐらいな」
「ごめんね、けんちゃん……」
「お前な……、ちょっ、真っ直ぐ歩けよ」
「すみません」
ううう、なんかフラフラする……。
タクシーのシートにもたれ掛かると、そのまま睡魔に襲われて意識が曖昧になっていった。
「野上?お前、家何処だ?おい!野上?まだ寝るなよ……参ったな」
原口係長の困ったような声が、遠くで聞こえたような気がした。