泣き顔にサヨナラのキス
    

伝票を取ろうと手を伸ばしたのは、あたしだけではなくて。


あたしは伝票じゃなく、原口係長の手を掴んでしまった。


「な、なんだよ」


「あ、えっと。ここは、あたしが払います」


「いいよ、別に」


「いえ、それではあたしの気がすみませんから」


「……じゃ、ご馳走になるよ。ありがとう」


そう言って、原口係長は伝票を離した。



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