群青の月
夏は、大嫌い。


自分ではどうする事も出来ない暑さのせいで、いつもに増して苛立ってばかりで。


怠いと訴える体にこもった倦怠(ケンタイ)感は、何をしていても拭う事が出来なくて。


その上、夏だって言うだけでバカみたいに開放感に包まれて騒ぐ人達を見ては、不快感と嫌悪感を抱く。


何よりも、夏にはいい記憶なんて一つも無くて…


耳をつんざくような蝉の鳴き声が聞こえて来る頃にはいつも、思い出したくない過去の映像がつい昨日の事のように鮮明に蘇る。


だから…


あたしは、夏が大嫌いなんだ――…。


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