群青の月
袋の中に入っているのは、缶ビールが二本と新しいタバコだけ。


「ほら」


俺は笑顔で缶ビールを取り出し、そのうち一本のそれを女に差し出した。


「……どうしてビールなんかあるのよ?」


「ん?さっき飲んでた残り」


「アンタ、死のうとしてたくせに飲んでた訳?」


「あぁ、それは違う……。ここから夜景を見ながら飲んでるうちに生きてる事がバカらしくなって来て、飛び降りてみようかと思っただけ。自殺は後で思い付いたんだよ」


俺の言葉が意外だったのか、女は目を小さく見開いた。


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