群青の月
「柚葉」


タバコを灰皿に押し付けながら呼ぶと、柚葉が体をビクリと強張らせた。


彼女の表情が、緊張を隠す余裕も無い事を物語っていて…


何だか、やけに愛おしさが込み上げて来る。


「さっきの話だけど……」


微笑みながら切り出した俺に、柚葉は戸惑っているんだろう…。


彼女の視線が左右に泳いで、その手は空っぽのグラスに伸びた。


不謹慎だけど、いつもはクールな柚葉が焦る姿が面白くて、つい笑ってしまいそうになる。


微笑ましい光景を目にした事で、微妙に残っていた緊張感が解れた。


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