群青の月
「……アンタはさ、あたしの何を知ってるの?」


「ん?」


「名前だって名字すら知らないし、携帯の番号とアドくらいでしょ」


俺が答える前に、柚葉の呆れ混じりの声で答えが零された。


「たったそれだけしか知らなくて、何で好きになれる訳?」


嫌悪感にも似た感情をあらわにした彼女が、射抜くような視線を向けて来た。


それは、出会った頃と同じ表情。


まるで全てのものを軽蔑しているような、冷たくて悲しい瞳。


だけど…


俺を蔑むように睨む瞳が微かに揺れていて、今にも泣き出してしまいそうに見えた。


< 521 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop