群青の月
抱き締めたい衝動に駆られたけど、それをしてしまえば止められなくなりそうで、何とかその欲求を抑える。


「え〜っと……。何か食えそうな物あったかな……」


わざとらしく言いながらソファーから立ち上がって、逃げるようにそそくさとキッチンに向かった。


冷蔵庫や戸棚を漁る素振りを見せながら、柚葉からは死角になっている場所でゆっくりと息を吐く。


落ち着きを取り戻す為に何度目かの深呼吸をした頃、カタリと音が鳴って背後に人の気配を感じた。


「冬夜……」


その直後、どこかぎこちない口調で名前を呼ばれた。


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