群青の月
ゆっくりと上っていく、タバコ二本分の細い線。


二つのタバコの先端から緩やかに立ち上る紫煙が途中で絡み合い、クリーム色の天井に辿り着く前に消える。


「ケーキもあるんだよ」


「……わかってるよ」


苦々しい表情を浮かべながら笑った冬夜が、半分くらいまで吸ったタバコを灰皿に押し付けた。


「DVDでも借りて帰るか」


「何か観たい映画でもあるの?」


「いや、別に。何となく借りようと思っただけ」


冬夜は、彼の妙な提案に眉を寄せているあたしの手を掴むと、支払いを済ませて店を出た。


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