群青の月
「……本当に大丈夫か?」


「大丈夫だってば。だから早く行って。遅刻するよ」


「……わかったよ。お前は昼からだっけ?気をつけて行けよ?」


俺は腑に落ちないままそう言って、柚葉に背中を向けた。


その直後…


「冬夜っ……!」


柚葉が俺を呼び止めながら、腕をグッと掴んだ。


不意の事に驚きながらも振り返ると、彼女が何かを言い掛けて口を噤んだ。


不自然な態度に首を傾げた後、今にも俯いてしまいそうな柚葉の顔を覗き込む。


その瞬間、柔らかくて甘い香りが鼻先をくすぐった。


< 810 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop