群青の月

◇Side‥柚葉


【Side‥柚葉】



開けっ放しの窓から、1月の冷たい風が吹き込んで来る。


白い息が宙を舞った。


身震いしながらも空気の入れ換えを済ませ、綺麗に磨いたばかりの窓を閉めた。


部屋の中をグルリと見渡す。


ガラリとしたそこは、物心付いた時から見て来た風景とは程遠いものだった。


いい思い出なんて一つも無い場所なのに、この部屋ともお別れだと思うと何だか寂しさが込み上げて来る。


そんな自分にため息混じりに苦笑した後、やって来た引っ越し屋に荷物と新しいアパートの鍵を渡した。


そして、大家に挨拶をしてから家を出た――…。


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