群青の月
「……それでも、お前には見せたんだろ?」


「え……?」


「その傷も、他の奴には見せなかった弱さも」


兄貴の言葉に泣き出したくなったのは、どうしてなんだろう…。


込み上げた切なさを抑えて、眉をグッと寄せた。


「あぁ……。もう、会えないだろうけどな……」


「どうしてそう思う?」


間髪を入れずに訊かれて言葉に詰まりそうになったけど、程なくして兄貴を見ながら口を開いた。


「随分前に出て行ったんだ……。それ以来、連絡も取れない……」


そして、ため息と一緒に静かに吐いた。


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