群青の月
「ただいま」


誰もいないとわかっていても、ついそう言ってしまう。


そんな癖が付いてしまったのは、きっとここが冬夜のマンションだから…。


21歳の誕生日を迎えた日、あたしはまたこの場所に戻って来たんだ。


玄関とポストのネームプレートには、あたしの名前が書いてあって…


まるで、正式に同棲しているんだって事を主張しているみたい。


「ほら、トーフ。足拭くからおいで」


どこかくすぐったい気持ちになるのは、そのネームプレートに書かれた自分の名前を見る事に、まだ慣れていないからだと思う――…。


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