あなたと私
なんで私はあの時、もっと真子を引き止めることができなかったんだろ?
私はただ見てるしかできなかったんだ。
そう、真子が帽子をとった瞬間安心してしまった。
真子もそのはず。
だから戻ろうとした時、足を滑らせてしまったことも、
雨が酷くて川の水嵩が増してたことも、
川の速さが勢いを増してたことも、
そして、
真子が溺れて、必死に助けてって叫んでいたことも、
真子が水の中へ消えていくところも、
私は何もかも嘘だと思いたくて、
信じたくなくて、
否定して否定して、
真子が死んだことを忘れた。