13回目の好き





「杉野がいつか聞いた、"何故教師になったのか"その答えを話しましょう。」



少し俯いて、もう一度暗闇に包まれた海を見る。



「兄の願いを、叶えたかった。俺自身に…夢などない。…今更、好きなように生きろと言われて、どうしようもなかったんです。」



情けないな、俺は。


スッと隣で立ち上がる杉野に気付きチラッと見る。



杉野:「上、見て下さい!…星、綺麗ですよ!」


そう優しく笑って答える杉野の横顔が目に映り、そっと顔を上げてみる。



こんなに、綺麗なものなのか…



杉野:「…では、三浦先生、私も先生に"真っ直ぐ"の答えを話ましょう。」


ニコッと微笑んで、俺の口まねをする杉野。


杉野:「…先生、言いたいことは言わなきゃ、口にださなきゃ伝わらないんです…。当たり前のことだけど、三浦先生に出会って気付いたんです、私。」


俺を見て照れくさそうに笑って、もう一度上を見上げる杉野。


杉野:「実は…初めて先生に会った時から好きだったんです…。でも、伝えなきゃって思って、気付いてもらいたくて、…あの化学準備室のドアを開けたんです。」






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