赤い狼 ~連の初めての気持ち~
「んだよ、どけ…んぐっ!?」
「ちょっと~、静かにしててよねぇ~。」
「お前ら…っ、いい加減にしろよ!」
倒れて身動きが取れないのをいいことに体を羽交い締めされた上、後ろから両手で口を封じられて声が出しにくい。
なんだよコイツら!なんなんだよ!!
「あ~、そうだった!」
暴れる俺を楽しそうに見下ろしている女が突然、何かを思い出したらしい仕草を見せて床に無造作に置かれていたペットボトルを持ち上げた。そしてそれをそのまま俺の目の前に差し出し、
「はいドーゾ。これ飲んで!」
にこり。背筋に悪寒が走る笑みを浮かべた。
差し出されたペットボトルをしばらく凝視する。
思わず、何が入ってるか分からない奇妙な飲み物を飲むという思考が人間にはあるのかどうか知りたくなった。
こんな状況で差し出された飲み物を飲むなんて俺がするわけない。
「飲む訳ねぇだろ。」
手足が自由なら女が持っているペットボトルを落としていただろう。
だけど今は完全に動きを封じられている。だから女を睨むしかできねぇ。