Nostalgicな祭りのあとで

折れた桜の幹から、ひょろりとした新枝が伸び、幾つかの粒が点々としている。
ワァアアッと歓声が上がった。

「蕾だ･･･桜、生きてる！」

やまじいは山神様に心からの祈りを奉げた。

そして、傷つきながらも逞しく生きている桜に、愛する人を重ねた。
あの時自分達を助けてくれた、桜子の想いに感謝した。
「桜子･･･有難う。」

陸は大樹達を振り仰ぐと、笑って言った。
「俺、科学者になりたい。父さんみたいに研究して、汚染物質を中和するモノ作るんだ。そんで、この山や色んな場所を助けたい。」

「うん。いい夢じゃん。」
大樹は小さな子のように無邪気に笑った。

「そろそろ学校！」
藤崎の声に子供達が山道を駆け下りていく。

ヒラリ。
働く大人達のもとに、山桜の花びらが届いた。
この山のどこかで、逞しく生きる山桜が、何かを語りかけるように。
風に乗って町へ、ヒラリヒラリと泳いでいった。