先生と生徒



「久しぶりだな、マキ」


ベッドから上半身だけ起こした、やつれた、目を細くして笑う男の人は、やはり10年前のお父さんの笑顔だった。


でも、目を合わせること出来なくて。
今さら、合わす顔もなくて。


「………」


病室には沈黙が流れる。


「ところで、そちらの方は?彼氏か?」


と、先生を指して問う。


「…彼氏じゃ「彼氏です」…えぇ」


ニコリと微笑む先生に、驚きの目で先生を見る。


…先生が、彼氏…?


「そうか…良かった」


また、くしゃっと笑うお父さん。

と、言うか今さら"お父さん"だなんて呼んでもいいのか分からない。


ただ、目の前にはやつれきった実の父親と、愛し合って出来た、跡継ぎの息子。そして、ニコニコ笑う先生。


…すごく逃げたい。
10年ぶりの父を目にして、本当にどうしていいか分からず、ただただジッと見ていた。

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