BEST―FRIEND
エピローグ
2011年 −春−
[ニューヨ−ク]

管理人に部屋を開けてもらい中に入る
…懐かしい夫の匂いがした…

夫の豊がニューヨ−クに転勤して三年…仕事が忙しくて日本には帰れないと言っていたけど…それには理由があったようだ。

俊樹の結婚式が来月に迫ってる中…なぜか自分の中でけじめをつけたくてここまで来てしまった。

この三年間よほどの用事がない限り、毎日スカイプをし、一日の出来事を話したりしながら、夫婦の絆を強めていたはずだった。

でも、それはお互いの儀式に過ぎないことは薄々感じていた。

部屋に入ると…ベッドの上の写真たてには知らない日本人女性と夫の写真が幸せそうに飾られていた。

それを見ても嫉妬心が湧かないのは覚悟していた部分と、もともとの冷めた性格のせいかもしれない。

でも、浮気していることに、安心している自分もいた。
三年も一人暮らししていて、女の人に見向きされない旦那も妻からしたら少し恥ずかしい。

実際、休日にポテッとしたお腹をボリボリかきながらリビングのソファーでテレビを見ながらゴロゴロされてるより、ちょっとオシャレな格好をして部下の彼女とランチに行ってくると出かけてくれるほうが魅力的に思ったりなんかもする。

部屋の中を見渡すと自分の写真も飾られていることに気づいた。

そういう所も夫の魅力なのかもしれない…。

1時間ほど経っただろうか…

玄関のドアが空いた。

そこには、写真たての中の女性が立っていた。

年齢は22-23歳だろうか。ロングのサラサラヘアーでスタイルがいい、かなりの美人だ。

その女性は動じることなく
『初めまして萩原豊さんの秘書の井川晴美です』

と深々とお辞儀をした。

『こんにちわ』

とりあえず笑顔で挨拶を交わす。


『奥様のことは萩原さんからいろいろとお聞きしています』
彼女の言葉にはイヤミがなかったが

『私ははあなたの存在を知らなかったけど…』と少しイヤミを含めて応えてみる。


しかし彼女はそんなことにお構いなしに

『イスにおかけ下さい。いま紅茶をおいれしますから』と言ってリビングのイスを引いた


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