王様の、言うとおり



キングのタイプ……。


『可愛ければ誰でも良いんじゃないかな。』



「私は可愛いと思えないけど。」



『奈留ちゃんっ!』



ドア一枚隔てた向こうにまだいるはず。



しーっと息を出せば、にやっと笑った。




別に聞かれても良いみたいです。

強い。



にっこり笑った絵美ちゃん。



キングの顔が……目に焼き付いて離れない。


そして、気持ち悪い胸の中。



なんでだろう。



温泉に入っているのに、気持ち良いなんて思えず、盛り上がる脱衣場から聞こえる声をただ、奈留ちゃんと2人で聞いていました。




【にじゅう。王様と花火】





    この夏合宿で
  楽しいこともあったし
  嬉しいこともあった。



  怖いこともあったし、
 初めて分かったこともあった。


 全体的には楽しかったはず




    ―――なのに



     胸に溜まる
 気持ち悪い何かのせいで。


“こんな合宿なければ良かった”  そう思ってしまう自分が
     いるのです。




 ――その理由が分からない。








『眠れない……。』



ぽつりと吐き出した言葉は、今日もやっぱり誰にも聞かれず消えていきます。


肝試しの事を思い出して、眠れないのもあるけれど、その後のこともついでに思い出してしまって。


ギュッと目を閉じて無心になろうとしても、出来ません。



それでも、絶対に携帯には手を伸ばさず。





結局合宿最終日は、一睡もできませんでした。








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