王様の、言うとおり


どのようにして暴れたのか後の状態しか目にしていない私にとっては分からないけれど。




あの、声にならない叫び声。お皿や物が何かに当たる音、割れる音。そしてキングの必死になって止める声。



楽しめたはずなのに海にも入れなかった痛そうなひどいケガ。

全てが一瞬にして次々と脳裏に浮かんで

無意識に指先に力が入っていた。




「……菜月ちゃん、」



『っ、はい。』

おいで。と。

手で招かれて吸い寄せられるようにおばちゃんに近付けば冷蔵庫が開いて。

「苦手なフルーツって何かある?」

『いえ、基本何でも大好きです。』

「じゃあ全種類入れるわね。」



『え、』


冷蔵庫に並べられているゼリー。種類、豊富なんですけど。



「遠慮しないで。どうせ煌一人じゃ食べきれないから。」




スッと手を伸ばされて手に取られた紫色のパッケージ。



パタンと冷蔵庫が閉まり、くるっと反転したおばちゃんはまたどこかへ手を伸ばし、


「はい。」


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