王様の、言うとおり
静かで、落ち着いた声。
カーテンで閉ざされているけれど窓の向こうはもう日も暮れて薄暗くなっているでしょう。
「出れ、るよ。」
《じゃあ、家の前で。》
それだけ聞こえて、切れた電話。
待ち受け画面に戻ってしまった携帯をしばらく見つめた後、部屋を出ます。
「菜月?どこ行くの。」
玄関で出しっぱなしにしてあったサンダルに足を入れた瞬間、後ろから聞こえてきたお母さんの声。
「ちょっと煌のとこ!」
振り向きもせず告げるとドアを開けて出ます。
涼しかった室内から一変、
じめっとした蒸し暑さにじんわりと気持ち悪さを覚えたけれど、そんな感覚は次に見えた姿に消えてしまって。