王様の、言うとおり


言えよ、お礼。正面の目が言ってます。


どうして私が!?

そもそも目覚ましが煩いからクッションを投げて起こしてあげた訳で。



普通の優しい人ならば、『ありがとう、煩かったねごめんね?』と優しく返してくれるんじゃ?


お礼を言われても、私がお礼を言う必要は無いと思う。




うん、絶対無い。

「な、なんで私が……。」

そうだ、なんで私が言わなきゃ



『あれ?お礼も言えないんだ。高校生にもなって。』



「違う!どうして私がお礼を言わなきゃいけないって事です!……大体、目覚ましが……。」



目覚ましがいけないんだ。



絶対に言うものか、とグッと口を結んで彼を見れば、クックッと笑っている。




『そうだね。目覚ましのせいでそのクッション飛んで来たんだっけ?』


「ま、いいや」と言ってベランダにもたれていた体を起こして部屋に戻っていく煌。



へ?





私は拍子抜けだ。


いつもなら、私が謝るまで会話を終わらせようとせず、




仕舞いにはベランダを乗り越えて来る勢いなのに。





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