いぢわる兄は同級生
「ったく、相変わらずとろくせーな」
そんなあたしの背後から、ひょこっと顔を出して憎まれ口をたたく水樹。
あたしの肩に腕を乗せて、その上に顔をのせている水樹との距離はかなり密着していて、一瞬ドキッとする。
窓から入ってくる風で、ときおりフワッと揺れる水樹の髪からは、優しいシャンプーの香りがして‥‥。
少しだけ自分に熱を感じた。
「うっ、うるさいな‥‥。今、頑張ってんじゃん‥‥っ」
そんな自分をごまかすように、手元で切っているジャガイモだけに集中する。
あたしの耳元で、ふぅんと呟いた水樹は包丁を持つあたしの手に、自分の手をそっと重ねた。
「‥‥っへ‥」
そのままギュッと握られた手に、もうあたし何がなんだか分からなくなって、カァーッと顔が赤くなる。
あたしの後ろから覆い被さるようにして手を握る水樹には、そんなあたしの表情は見えることなく。
また、あたしも水樹がどんな表情をしてるのかなんて分からない。