ハッピーエンド
女はさっき仲埜が鳴らしたブザーで目を覚ましていた。
悪夢にうなされていたが起きてみると何の夢を見ていたのか思い出せない。

しかし実態のない恐怖心だけが後頭部にこびりついていた。

(何なのこの人たち…)

女の名は蓮尾亜衣(はすお あい)。

実は東慶介と同じ大学の同級生だが、この時点で未だ互いを知らない。

そんな事よりも今は、偽善ぶった笑顔で近付いてくる中年男と、その後ろでニヤニヤと軽薄そうに笑う若い男が恐ろしくて仕方なかった。

(どうしてこんな場所に…ああ!そうだ、宅配便!)

しびれた亜衣の脳裏に少しずつあの瞬間の光景が浮かんできた。


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