月物語2 ~始まりの詩にのせて~


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不可能だ。



とにかく、二人だけでは脱出できない。



柴秦は三日三晩考えに考えた。



答えは出ない。



だが、楊太僕は生きている。



生きていてよかったと、心から思っている。



それなのに、堂々巡りする思考が情けなく、腹立たしかった。



「柴秦様、もうこれ以上は待てません。
次、またいつ一緒になれるか。」



楊太僕の従者がさり気なく近づいてきて言った。



青年の名は、高進(こうしん)という。



三日という期限はとうに過ぎていた。



労働場所の交代が延びているのは、何やら村を狩った賊の受け入れや、村人と奪った金品らの処理に負われているらしい。



これも、高進からの情報である。



民を何より大切に思う楊太僕は、村人の犠牲によって救われている。



何とも皮肉だ。



「明後日、明後日までです、柴秦様。
わたくしは、明後日の夜、楊太僕を救いに行きます。」



「まて!」



「いえ、待ちません!」



「連れ出すとして、どう脱出するというのだ。
逆に、楊太僕を危険にさらすことになる。
警備に隙はない。
とにかく、速まったまねはするな。」



高進はいつの間にか、去っていた。



栄楽の警備体制に、高進も焦りを感じているのだ。



―楊太僕、わたしは、あなたを救えるのでしょうか…








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