それだけでよかった
逃げ場は屋上。
ひとりでいても、独りだってばれない場所。
コンクリートの上にお弁当を広げる。
冬樹が好きだという塩卵焼きがなんだか憎らしい。
予想はしていた。
冬樹はモテる。なぜか、モテるんだ。
『いや、俺モテたことねぇよ?告白だってそんなされたことねぇしなあ』
って冬樹はよくそういうけど、競争率の高い男の子に告白するのって、結構大変なんだから。
最初に食べるのは、卵焼き。
「おい、目の前で好物食われるのはいい気しねぇよ?」
「え」
卵焼きにかぶりついたのは、冬樹だった。