モノクローム
「出なくていいの?」



どうしようか考えてる間にリリーが戻って来て、心配そうな表情を見せる。



「いい」



俺は放って置けばそのうち諦めるだろうと思い、無視してバスルームに向かう。
リリーは困惑した顔をし、何か言葉を探すように黙っていた。


説明するのは得意なほうじゃない。
むしろ、不得意と断言しても良いくらいだ。
多分、相手は感情論で責めてくる。
そうなると、もうお手上げ状態だ。



「髪の毛、戻すっかな」



鏡を覗き込むと、左の頬がまだ赤い。
だいぶマシになったみたいたが、更にまた色が重ねられるかと思うと嫌気がさす。



「取りあえず、夜にすっか…」


まるで自分に言い聞かせるように呟き、鏡をシャワーで流してバスルームを後にした。

バスタオルで髪を拭いながらリビングへ戻る間も、髪を乾かしてる間や着替えてる間も携帯は鳴り続ける。
いつ止むのかと試してみたくもなったが、気持ちが冷める一方なので電源を切った。




「ちょっと付き合って」


「え?」



黙って様子を眺めてたリリーの手を取り、携帯を放り出して部屋を出た。
行き先は特に決めてない。

ただ、今日は部屋に居たくない気分だった。
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