モノクローム
春色
麗らかな、ある年の春。



昼寝にも慣れた頃、忍び寄る嫌な影に目を開ける。



「まだ半分しか塗ってないのかよ…」と呆れた声を出しながら、男はコンビニの袋を「ほら」と差し出す。


「うぃっす」と軽く応え、いそいそと袋を漁りながら、お目当てのパスタを取り出して頬張った。


「まず…」


「文句言うなら自分で作って来い」と男は拳で頭を突き、辺りを見回して大きな溜め息を吐く。



「すげぇな、桜…」


「でしょ?いちいち掃いて塗るんすよ…掃いても掃いてもこれですもん。昼寝もしますって」


「却下。それ食って早く終わらせろ。終わったら直帰してもいいぞ~」


「マジで?」



そんな声には耳も貸さず、男は手をヒラヒラさせて梯子を降りて行った。


「面倒くさ…」


そう呟いた後、黙々とパスタを食べてお茶を飲み込み、また屋根に寝転ぶ。



あれから幾つの季節が過ぎたんだろ…

取りあえず俺は23になって、早瀬と言う若い刑事の紹介で塗装の手伝いをしてる。
その仕事で良く面倒を見てくれるのが葉田さんと言う人で、「若い頃の自分にそっくりだ」なんて言って、子供みたいに可愛がってくれている。


何事もなく、何気なくそんな日々を送っている。
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