恋華(れんげ)
第12話 「想定内のディスティニー」
うれしいのに、素直に喜んでいいのか、ちょっとギモンなこと、ってあると思う。


ある夜のこと。

あたしがクラブでの勤務を終えて帰ってくると、アパートの前の道路から、あたしの部屋に灯かりが点いているのが見えた。

「…!」

でも別に慌てたりはしない。
こーいうことは最近ではよくあることだから。

部屋に入ると予想どおり貴志が来てた。


カレには、あたしの部屋の“合いカギ”を渡してある。だからカレがあたしの部屋に勝手に上がりこんでたとしても、それは全然おかしいことじゃない。

おかしいのは、本来なら交通誘導員のバイトに行ってるはずの時間なのに、カレがあたしの部屋にいるってこと―――



ギターを抱えて、あぐらをかいて、足元には楽譜とシャーペンが置いてある。

曲づくりに夢中らしく、あたしに“おかえり”も言おうとしない。


「貴志、ただいま」

「あ…おかえり……」

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