恋華（れんげ）

第５話 「魔法のタネ明かし」

あたしが秋吉英二の勤務先である保険会社に入社したのは、まさに夏まっさかりの頃。

海で泳ぐのならベストなシーズン♪

だけど営業で外回りをする人間にとっては地獄のシーズンだった――――



その日の営業先は、とある町工場。

詳しいことはよく分からないけど飛行機のナンかの部品をつくってるらしい。

あたしが高校を卒業して最初に勤めた自動車部品の工場とよく似た雰囲気があって、ぶっちゃけ本当は行きたくなかった…。

けど仕事だからしかたがない……。


あたしは工場の“お昼休み”の時間を狙って訪問をした。

保険外交員のあたしにとっては、お昼休みこそがイチバン忙しい時間帯。

それは仕事の手を休めているお昼休みの時間なら、ちゃんと話を聞いてもらえるからだ。



デスクワークの事務職とちがって、営業職はひとりで自由に外を回れるから、団体行動の苦手なあたしにはむしろ適正があるんだと思ってはじめたんだけど……

それは大きな間違いだった！