恋華(れんげ)
無愛想でくちベタなあたしなんかにできるような仕事じゃなかった、ってこと―――


それでも、あたしはたくさんの保険のパンフレットを机の上に並べて、頭頂部の毛が淋しくなった工場長に向かって額の汗を拭きながら一生懸命説明したさ。

そう、一生懸命に愛想を振りまいてね♪


だけど、ひととおり説明を聞き終えた工場長はおもむろに口を開いてこう言ったさ、

「そうだねぇ…さんざん説明してもらったあげくで悪いんだけど……やっぱり今、入っている保険のままにしとくよ」


フッ。そんなセリフは聞き飽きてるのさ!

「はい、そーですか」って、おとなしく引き下がると思ったら大間違い!!


だから、あたしは笑顔で、

「いえ、すぐにお返事をいただかなくても結構です。今回はこちらの資料を差し上げますので、奥様とごゆっくりご検討していただいて、もしご不明な点等ありましたら…」

…とあたしの名刺を渡して続けた、

「こちらの番号までお気軽にお電話ください。すぐにご説明にお伺いいたしますので」



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