グイ…

「…ぅぇ?」

今にも倒れそうになっていた私の腕を強く引っ張って体に抱き寄せられた。

「だから…言ったじゃんか…」

振り返るとそこにいたのは…



「カズ君。」


カズ君が焦った顔をしてくれていた。

「もー前見て歩けって…。」

「ぅ…だって…だ…ゥ。」

私は独りから解放された安心感からかそのまま泣いてしまった。

腕を掴んだままのカズ君は驚きながら優しくそのまま抱きしめた。


「泣くな…離れへんから。ずっと…そばにおったるやんか。」

「…ぅ、ヒック…カズ君。」



そのとき私は甘えていた。

ハチは受験ばっかりで…この恋の行方が全く見えなくて
毎日、孤独と不安が自分を押し殺していた

だから…カズ君の優しさが、何処かでハチに置き換えてしまった


どうして私はあんな街中で泣いてしまったんだろう…



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