鳴神の娘

庇護者の思惑


俺は腕の中の少女を見た。

ああ、泣いている。

この娘が本当に鳴る神の娘かは分からない。

そんな些細な事は、もうどうでも良かったから。


ただ、その手が俺を頼る内は。

縋りつかれて、やっと分かった。

俺はこの娘にいつか狂うだろう。


それもいい。


「見つかるまで、私が貴女を守る」


そう言えば、やっと少女は安心したらしい。

今はすやすやとこの腕の中で眠っている。


和平が成立したらすぐに城へ連れて帰ろう。

そして城の奥で、神々の世界を忘れるくらい、幸せにしてやろう。

俺から離れられなくなればいい。

俺がいなければ恐ろしくて、夜も眠れないと言わせたい。


―――これは罰当たりな考えなんだろう、きっと。

何しろ神の娘を、捕らえる算段を練っているんだから。

愛おしい気持ちが湧き上がって、名前を呼ぼうと思った。

けれど、肝心の名前を知らないことに気づいてしまった。


明日の朝、目が覚めたら聞こう。


―――もう、放さない。



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