狼かける吸血鬼<短>


私が巨乳女の元へと走りだそうとした時、


後ろから聞こえたその一言。


たった一言なのに、私の動きを止める。
逆らえなくなる。


『お前、何か勘違いしてね…?』
まだ苦しそうなのに、立ち上がって、私にゆっくり近寄る。

「何が……!」


異様な雰囲気に、私はすっかり縮こまってしまう。


『お前が嫌がるからよ、…こっちは死ぬ気で我慢してんだよ…。

他の血吸ってみたって、お前のその匂い思い出す度、どんどん不味くなって。仕舞には口に流れ込んでくる糞不味い味に苛ついて無駄に噛んじまった』


巨乳女のあの幾つもの跡は、そういう事…。


『お前が悪いんだ。
極上じゃねえと満足出来ねえ。俺様をこんな貪欲な体にしたのはてめーだ』



遂に笹木遥は、私を追い詰めて、制服のボタンを外した。


「止め……」


『ゔっ!!』


私が目を瞑った瞬間、笹木遥は再び激しく苦しみだす。


『ぐあ…っ!』


血を飲まないだけで、こんなになるものなのか?


『俺ん中でも…、病原体になっちまった……らしい』


前に聞いた、吸血鬼には栄養になるが人間にとっては病原体になるていう話。

あの時笹木遥は『俺達吸血鬼』って言ったけど、笹木遥は吸血鬼じゃない、あくまで半獣なんだ。


『くっ…はぁ…、あん時は病原体なんて言ったけど…、そんなもんじゃねぇ……、吸血鬼の半獣が少ないのは、これが…理由だ…』



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