世界が終わる前に
なんでか麻子ちゃんの勝手極まりない妄想で、漆原黒斗と図書館でラブラブイチャイチャした設定になってしまったらしい私。
ついには周りからも、ちらほらと冷やかしの歓声が上がってしまう始末。
塾が終わるまで、休み時間の度に麻子ちゃんを筆頭にみんなから質問攻めを喰らって、帰る頃には疲れてグッタリだった。
結局、今更になって『彼氏じゃないんです』とも言えず仕舞いの臆病な私。
なんて情けないんだろう。
なんてバカなんだろう。
ワイワイ賑わうみんなの輪に混じりながら、ハァと一つ溜め息を吐き出してビルの観音開き戸を潜って駅へと向かった。
…――それから私が重要な事を思い出したのは、気苦労の絶えない塾での数時間を過ごし、やっとの事で家路に着いた時だった。
「瀧川中の事、聞くの忘れた……」
自分の部屋でぽつんと呟いたそんな独り言が、虚しく響いた。