世界が終わる前に


三年目の夏休みも終わりに近づき、右肩上がりだった浮かれ気分も下がり始めた今日この頃。



塾までの空き時間を、ぼんやりしながら過ごしていた。



勉強机に座りながら頬杖をついていた私は、ふと思い出したようにそろりと勉強机の引き出しを開けた。



そして普段あまり使っていない引き出しの奥から、埃っぽい一枚の古ぼけた写真を引っ張り出した。



それは、私がまだ小さい頃、家族全員で家族旅行に行った時に撮った集合写真だった。



まだ幼い兄に抱き抱えられている幼い私も、幼い私を大切そうに抱き抱える幼い兄も、二人ともあどけない笑顔を浮かべていて、とても幸せそうだった。


姉も母も父も、みんな笑ってる――。



いつからだっただろう。


こんなにも、家族という存在が息苦しい存在になってしまったのは……。






「――…奈緒?あなた今日も塾でしょう?さっさと準備しちゃいなさいよ」


「……はーい」


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