世界が終わる前に


突然、扉をノックもせずに開けて部屋へと入ってきた無神経な母に、私は気のない生返事を適当に返した。



それから渋々ながらに、勉強机の上に散らばっていた参考書やら筆記用具やらを無造作に鞄の中へと突っ込んだ。



鞄を手に取り立ち上がった私は、ふとその家族写真を数秒見つめた後…――ほぼ無意識に部屋の真っ白な壁にかけてあったコルクボードへと、それを画鋲で貼り付けていた。



……またいつか、こんなふうな温かい家族に戻れるようにと、願いを込めて――。



あわよくば私たち家族を繋ぐ世界が、終わってしまう前に、と。


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