彼岸と此岸の狭間にて
山中は稽古場の中央まで進むと正座して上座の神棚に向かって一礼をする。葵も遅れじと後に続く。               
「私は当館の師範代『榊源之助』である。当館の主人(あるじ)が病気療養中の為、私がお相手致すが異論はあるかな!?」                
「よしなに。拙者は『山中光太郎』、こちらの付き添い人は『紫馬葵』殿で御座る」                      
「うむ…では好きな物をあちらより選ばれよ」               
榊が顔を向けた先は上座の近くの壁である。そこには多数の木刀が横にして置かれてあった。                  

山中は『スッ』と立ち上がるとその所まで行って自分に合う木刀を探す。                                                   
「では、これで…」               
気に入った一本が見つかったらしく軽く二、三度素振りをしながら戻って来る。            
榊は弟子から木刀を受け取ると中央に歩み寄る。              

『ボケーッ』と事の成り行きを葵は見ていると
「紫馬殿、ここに居られては…」
と山中に退却を促される。               
自分の無知さを指摘され慌てふためいて稽古場の隅っこに身を置く。どこからか失笑が洩れる。                             
榊が上半身裸になるのに応じ山中も上着を脱ぎ捨て裸になる。                    
(あれっ?華奢だと思っていたら結構引き締まった良い体…それに比べて榊は筋骨隆々!!山中さん、危うし!?)                           
審判を務める弟子が中央に出て来る。                   
「では、両者前へ…どちらかが戦闘不能となるか、『参った』と言った時点で『勝負あり』と致します」             

(戦闘不能!!?『死ぬ』って事?俺は骨は拾いたくないよ〜っ、山中さん!!)                            
山中と榊、中央に対峙して一礼を交わす。
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