彼岸と此岸の狭間にて
6.『存在と無』
〔1〕         

「うわああ〜〜っ!!」             
起き上がって周りを見る。
いつもと変わらぬ自分の部屋。            
(夢か………)                 
机の上で俯せ状態で寝ていたようだ。                   
(今、何時だ!?……午前1時か!?)                  
葵は軽い欠伸を1つして伸びをする。                               
(それにしても変な夢だった…                   
俺が侍の姿をして、暗闇の中に誰かが座っている。


その人は上半身裸で『切腹』しているみたいな格好をして……            

俺はその人を『山中殿』と呼んだ!                    
『山中』???まさか巻き物の『山中』!まさかあ〜っ!?……勉強のし過ぎか!?ってそれ程してないけど…)                                 
葵は机を離れカーテンの隙間から外を眺める。               
(おっ、雪じゃん!どうりで寒いと思ったよ)                

窓を開け手を差し出して雪の感触を確かめる。               
(これは積もるぞ!美優は大喜びだろうな、あいつはどこか犬みたいなところがあるから、はははっ…)                  
一人笑いして窓を閉める。                                           
部屋のカレンダーは2015年12月23日となっていた。                     
(明日はホワイトクリスマスか!?まあ、受験生、特に俺には関係ないけど…)                        
葵は夢に出て来た『山中』が少し気になったので巻き物を机の引き出しから取り出してみる。                     
(これ見るのも久しぶりだなあ…最近は学生の本分に専念していたから…)              
実の所、日本刀の存在すら忘れかけていた。
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