マイベイビー&ハピネス☆

人気の無い空き教室。

戸口の影で立ち止まると、中から聞きなれた関西弁。


「――薫と別れたって聞いた。ホンマか」

「…うん」

「せやたら、俺と付き合って欲しい」

「でも、私……」

「今すぐ、返事が欲しいとは言わん。薫と別れた理由は知らんけど、もう少し時間たってからやないと、切り替えできんやろうし」

「……」

「ただ、ヒカルがまた誰かに告白される前に、知っといて欲しかったんや。俺の気持ち」

「……うん」


少し静かになる。


「オレは、ヒカルのこと、大切にするから」

「……うん」

「そーゆーこと。それだけやから」


足音が近づいてくる。

俺は動かずに、立っていた。

戸がガラッと開き、新一が出てきた。

俺を見て、一瞬驚いて立ち止まる。

俺はたぶん、新一を睨みつけていた。

だが新一は、何も言わずに去っていった。


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