オパール・オッドアイ
「…家まで送れないのは残念だけど今日のところは諦めて帰るよ。
それじゃ、ま・た・ね聖歌。」

「えー…。」

「約束したよね?
今になって取り消しとかなしだから。
逃げるなよ?」

「うぅ~。」

「『また』だと?」

心底嫌そうな顔をしてうさぎを睨みつける雪お兄ちゃん。

「また会うって約束しちゃったの。」

「ほ~う。
この聖歌がそんな約束すんなり受け入れるわけがない。
どうせ脅して無理矢理約束を取り付けたってところか?
良い度胸してるじゃないか。」

そこまで言うと突然満面の笑みで私に『騒音0!クリアな旋律を貴方に。』のキャッチフレーズで有名な高性能ヘッドフォンを装着する雪お兄ちゃん。

中からは私の大好きな曲が流れている。

「イキタママ、ソノニク ヒキチギッテ ナイゾウ ヒキズリダシテ ヤロウカ?
ツチノ ウエデ ヤスラカナ ネムリニツケルト オモウナヨ。」

雪お兄ちゃんが何か話しているのはわかるものの声が小さいのか内容までは全く聞こえない。

うさぎの顔色がみるみるうちに悪くなっていく。
雪お兄ちゃんはさっきと変わらず満面の笑み。

「~♪
やっぱりこの曲良いよねぇ。
しかもこのヘッドフォン最高に音が綺麗!
雪お兄ちゃんさっき何話してたの?
うさぎの顔色悪いよ?」

ヘッドフォンを外して雪お兄ちゃんに訪いかけてみた。

「あぁ。
世間のせちがらさを切々と語り聞かせただけだよ。
学校の宿題があったことを忘れていたらしい。
今さら思い出して青ざめているのさ。」

あの短い時間でそれだけの内容が詰まっていたのか。

「あとそのヘッドフォン聖歌にプレゼント。
今まで使っていたの壊れたーって、この前来たとき言ってただろ?」

「えっ!?
こんなに高そうなの貰えない!」

「俺同じの持ってるし、お揃いにしたかったんだ。
貰ってくれないかな?」

「…それじゃあ遠慮なく貰っちゃうね。雪お兄ちゃん、ありがとう!
お揃い嬉しい!!」
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